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タイガー魔法瓶株式会社
代表取締役社長 菊池嘉聡氏

日本の伝統的な調理家電メーカーであるタイガー魔法瓶株式会社。魔法瓶や炊飯器など創業以来95年に亘りいつの時代でもお客様の暮らしに身近な製品を提供し続けている。創業者である祖父から続く、歴史のある企業を継いで19年になる菊池氏に、同社の経営理念や将来ビジョンについて熱い想いを聞いた。

祖父の代から続く歴史のあるタイガー魔法瓶株式会社の社長に就任

タイガー魔法瓶株式会社
代表取締役社長 菊池嘉聡氏

松 園

社長になられた経緯について教えてください。

菊池氏

祖父が95年前の1923年に創業しました。その後父が継いで、私が3代目になります。1990年代後半は事業が非常に厳しい時代で、組織体制の大幅な見直しとともに2代目である父が引退しました。私は1999年に35歳で社長に就任して、早や19年になります。

松 園

アメリカへの留学経験もおありなのですね。

菊池氏

日本の大学を卒業後、アメリカに3年間留学しました。父親と将来の話になった時に、国内で他の企業に入り学ぶか、海外を見てくるのか、2つの選択肢がありました。私は海外を見ておきたかったので、迷わず留学を選びました。

松 園

海外では何を学ばれましたか?

菊池氏

海外から日本を見る客観性、人生観、言葉が通じない中でのコミュニケーション力を学ぶことが出来ました。もともと抱いていた海外に対するコンプレックスを払拭することも出来ましたね。父の時代は国内で事業が拡大・発展をしてきたので、これからの時代は海外だという認識もありました。個人的な経験とともに、今後の会社の発展にも生かすことのできる価値のある留学でした。

商品開発に対する熱い想いは、そのDNAにある。

JAC Recruitment
顧問(元代表取締役社長)松園 健

松 園

商品開発やデザインなどにもこだわりがあるそうですが、その考え方や具体的な商品を教えてください。

菊池氏

現代は既存の商品を今までと同じお客様に販売しているだけでは事業の成長が見込めません。そこで去年の秋、「健康ソリューション」をプレスリリースしました。
日本はここ20年ほどGDPが増えておらず、なおかつ人口が減る一方のマーケットです。このままでは悲惨な状況になるのが目に見えています。また見方を変えると、高齢化が進み、マーケットのニーズが変わってくるとも言えます。そこで、創業から作り続けており当社のDNAである魔法瓶、家庭の電化製品を通じて、今後我々が社会にどのように貢献し、企業としても成長できるのかを考えていました。

まず、高齢化社会に向けての対応です。我社の個性・DNAは、美味しいご飯を美味しいままで食べていただき、温かいお茶を温かいままで飲んでいただくことです。幾つになってもご飯を美味しく召し上がって、いい年の取り方をしていただきたいと考えています。高齢者は、筋力の低下によって気管に食べ物が入ってしまい、誤嚥性肺炎を引き起こしやすくなってしまいます。そこで、飲み込みやすいご飯が炊ける炊飯器を開発しました。

また、低糖質生活を余儀なくされている方にも美味しいご飯を食べる喜びをお届けするために、低糖質の米粒状の加工食品「とらひめ」と、とらひめ炊飯メニューを搭載した炊飯器を開発しました。健康や美容のために低糖質ダイエットをされている方も含め、お米テイストでかつ不可栄養素や糖質がカットされているため、無理なくお楽しみいただけます。 そして、小麦アレルギーの方に向けては、無添加グルテンフリー米粉100%食パンを作ることができるIHホームベーカリーを開発し、米粉と一緒に発売しました。ホームベーカリー自体は数年前から手がけていますが、小麦アレルギーで辛い思いをしているお子様達にも喜んでいただける新しい商品です。

他にも、魔法瓶の技術を応用して宇宙開発に貢献しています。JAXAさんと協力して、国際宇宙ステーションの科学実験でつくられた検体を地球に持ち帰るための保温保冷容器の開発を手掛けました。

このように、将来に向けての成長の種を育てています。

松 園

高齢化社会や健康志向のニーズを踏まえて、他企業とフレキシブルに組んだ事業も展開されていますね。

菊池氏

率直に言って、我が社の規模では大手企業のように基礎研究を全て社内でやるのは難しいです。そこで、当社はオープンイノベーションという手法をとっています。専門性を持った企業と組みノウハウを頂戴しながら、スピード優先で目的達成のためのアプローチができるスタイルを構築しています。

今では地球全体がマーケット。

松 園

今、日本経済は飽和状態です。海外でも今後は少子高齢化が進むと考えると、日本での経験が生きてきます。グローバルにおけるビジョンはどのようにお考えですか?

菊池氏

グローバル化と言う意味は、販売拠点と生産拠点の2つの側面で考えています。

人口増加率や経済の発展上、一番の成長マーケットは中国だと思っています。また、我社は調理用品、家庭用品の比率が高いので、日本と似た食生活の東アジアや東南アジアが有望なマーケットになるでしょう。またアメリカや中近東でも長年ビジネスをしています。そして空白地帯のヨーロッパも大きなテーマですね。

我が社の生産拠点としては、大きな拠点として中国があり、もう1つベトナムにも工場を作りました。今後、関税制度が変化していくでしょうし、物流事情なども含めた様々なリスクやチャンスをバランスさせる意味で主に日本・中国・ベトナムの3カ国でモノづくりをしています。 今は地球全体がマーケットなので、どの国からどんな商品を販売していくのかという優先順位を考えつつ、生産拠点のある3カ国から供給を行っている状態です。

松 園

グローバル販売を進める中で、欧米系に対するアプローチはパンでしょうか?

菊池氏

パンだけではありませんが、小麦アレルギーに対するグルテンフリーの需要は、やはり欧米の方があると捉えています。パンを主食にする家庭が多いため小麦アレルギーの場合、食生活に困ってしまうからです。

松 園

欧米でも日本食がトレンドになってきていて、日本食の健康志向が世界的に広がってきています。そういう流れに対してはどのようにお考えですか?

菊池氏

欧米でも、寿司や日本食レストランは「ヘルシーで美味しい」と好評ですが、調理器・炊飯器を購入してご家庭で日本食を調理する所まで直結していません。ここはもう少し我々からの提案力が必要な状況ですね。

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