「めっちゃおもしろい」がビジネスを創出する

バリュエンスホールディングス株式会社
(旧株式会社SOU)
代表取締役社長 嵜本 晋輔 氏

ビジネス成功の本当の理由。

現在嵜本さん率いるバリュエンスホールディングス株式会社では買取り事業「なんぼや」などのほか、BtoBオークション「STAR BUYERS AUCTION」やBtoC販売事業など多くのビジネスを成功させている。秘訣をお聞かせいただけますか。

仕事を始めた当時はただ、がむしゃらにお客様が喜ぶことだけを考えていました。そこで僕がモノを買い取るのではなく、きれいごとじゃなく、僕自身をお客様に買ってもらえるかが大事だと気づいた。そうやって徐々に徐々に視野が広がってきました。

2011年に今の営業部のトップと一緒に銀座店を立ち上げた頃の売上が約10億。その後、倍々に急拡大しました。 成功の要因は差別化。お客さまが自分を選んでくれる理由をつくれたことだと思います。僕の選手時代の反省は、監督が僕を起用する理由がつくれなかったこと。それをビジネスに生かそうと思いました。
強豪がひしめく中、選んでもらえるビジネスモデルは何か。そのために他社のリサーチはもちろん、お客様から直接買い取っていたから、お客様からの色々な言葉、アドバイス、ご要望などを、様々な観点でとらえて、お客様はどういう店なら利用したくなるか人一倍考えたという自信はありますね。

そこで、僕らは今までの質屋の鑑定士のようにモノを鑑定するだけでなく、モノとお客様をつなぐサービスという切り口でリユース業界の「あたりまえ」を変えた。同じモノでコンディションも同じなら、買取り価格は同じなのが「あたりまえ」でした。でもいくらで売りたいかはお客様の価値観によって違う。そこでお客様とのコミュニケーションを通してお客様に納得いただける金額の提示や説明が必要だと考えました。だから単にモノの金額のみを提示する「鑑定士」ではなく、お客様とのコミュニケーションやおもてなしをするという意味を込めて「コンシェルジュ」と呼んでいます。
お客様のモノとの出会いから別れを紐解くのがコンシェルジュの仕事。同じ商品でも思い入れ、ストーリーが違う。例えば自分が新卒でコツコツお金を貯めて買ったモノと、あまり思い入れのない人からもらったモノの価値は全然ちがう。コツコツ貯めて買ったモノの価値って、すごい。
コンシェルジュも人間だから頑張ってちょっと無理しても期待に応えようとします。思い入れのあるものとないものでは、納得いただける金額が違うので、コミュニケーションを通して全体の満足度を上げていくアプローチです。
実際その方が利益率は高かったですし、お客さまは再来してくれる。そういう戦略で勝ってきました。お客様の立場に立って、改善を繰り返してきたことが発展した理由。質屋という暗いイメージを払拭するために白いスタイリッシュな空間にしたり、全店プライバシーに配慮した個室にしたり。

「ターニングポイントは」とよく聞かれるけど無いですね。コツコツと積み上げたものが形になってきただけです。

お客様の立場に立って、社会の「あたりまえ」を変え続けてきた結果ですね。起業した20代の頃から今まで、嵜本さんが心がけていることはありますか。

「変化は脅威ではなく成長の機会である」という言葉を常に心に留めています。人間は変化しないと成長できないけれど、それを脅威と捉えがちです。でも成長し続けている企業も人も、みんな時代に合うものを提供して変化している。現状満足は衰退のみだと思います。現状で満足している人は未来がどう変わるか仮説が立てられない。未来のお客様の趣味嗜好は変わるということを大前提に、今のサービスさえも過去のものと毎日思い続ければサービスを改善できます。これで2年も3年も安泰と思うと思考停止になってしまいます。

選手経験から人生に安泰はないという考えはありましたが、自分の中でここ数年改善された思考です。すごく成長した理由はそこかな。だから事業を成功するために誰よりも早くチャレンジをして、だれより多くの失敗を経験して成長することが成功に繋がると思っています。

このバリュエンスホールディングスの中で僕が一番失敗してるんじゃないかな(笑)。自分より凄い人がどうやって成長しているのか調べたら、結局失敗が成功の元。失敗して落ち込んで終わりだと成長の機会を自らが絶つことになるけど、失敗をポジディブに捉えてみんなも取り組めばチャンスはいくらでもある。

「そうきたか」と思ってもらえる新事業とは。

今後、事業でチャレンジしたいことはどんなことですか?

リユースの買取り販売に特化してきた第一創業期が終わったと思っています。もちろん第二創業期でも主軸になるが、リユースで生まれたコトを新たな価値として作り出していくのが今後の展開です。
昨年リリースしたアプリ「マイニー」はその考えから生まれました。特に僕らがやっているラグジュアリーな時計やバッグなどの買取りにおいてはお客様に買取金額をお支払いしますが、世界的に見てもお客様にここまでお金を支払っている会社はないのではないでしょうか。このポテンシャルを生かさない手はない。今までは単にお金をお支払いするだけだったけれど、長期的な将来を考えるとクロスセルとかそのお金の一部を投資しませんかとご提案する、とか、いろいろできると思っています。

目指すのはお客さまのウェルスマネジメント。一人一人の資産を管理するアドバイザーという姿勢でビジネスを提案していく。ただの買取り屋でなく、「今は売った方がいい」「今は売らない方がいい」というのをキチンと言える存在になりたい。全てがデータ化されていく時代の中で、正しい価値を知りたいというお客様のニーズがすごくあります。僕らは正しい価値を伝えられる数少ない存在なので、ビジネスに生かせる。世の中にインパクトを与えるような、みなさんに「そうきたか」と思ってもらえるようなサプライズを事業化したくて奔走しているところです。

会社が目指すビジョンを教えてください。

関係する方々が協力したいと思ってくれるような会社でありたいです。短期的な利益だけを追求する会社には価値はないと思います。5年10年100年とバリュエンスホールディングスという会社が永遠と成長するというのがビジョン。経営者の価値観が組織の価値観だと思っているので、チームで協力して成果を最大化する文化を大切にしながら、今後はもっと個々の能力を最大化してパフォーマンスも最大化させるような組織を目指しています。稲盛さんの本とか勉強し、学ばせてもらって、僕なりのエッセンスを加えてオリジナルでマネジメントしています。
いまは新規事業の創出も僕がやっていますが、1人で考えることは限られるので、面白いメンバーがアイディアを提案してくれると、もっと面白いことができるなという自信はあります。

中途採用で来た人の中には、業界では考えられないことを提案してくれる人もいます。僕は「異質×異質=オリジナル」だと思います。ビジネスの設計も「リユース×○○」という掛け算で考えるビジネス。そこからオリジナルが生まれる。人も同じ。「人×人」で新たな個性が生まれます。

異業種から学ぶことは本当にたくさんある。僕自身「元Jリーガー×マザーズ上場企業の社長=僕」しかいないわけで、ビジネスも個性も掛け算です。未来はこうなりそうという仮説を立てて、3年後5年後のユーザーはこういうことを考えるから、いまはこれとこれをやって掛け算したら、その時には受け入れられるだろうと設計してビジネスしています。

みんなが反対することはなぜ、成功確率が高いのか。

今後一緒に仕事をしたい人は?

これだけ世の中に会社やサービスがあって、人にワクワクしてもらえないと価値がない個性の時代に、新しい価値を生み出せる人。それも3人、5人が集まってつくりたいと思う人に来て欲しい。例えば「これめっちゃおもろない?」と提案して「めっちゃおもろい」と言われたら嬉しい。僕はそれをモチベーションにしています。社内には、大丈夫か?という雰囲気が出るときもあるけど逆にそれで燃える(笑)。一部の人は可能性を感じるが当事者以外は面白く感じないこともあるし、結局いままでに無いものだから受け入れられないだけで、受け入れてもらえるように進めれば成功する。みんなが反対するものは総じて成功の確率が高いと思う。

最後に若手リーダーへのメッセージをお願いします。

自分が楽しいとか面白いとか思えるものを仕事に。それにつきますね。次世代リーダーでも魅力的に見える人とそうでない人がいます。仕事を誰かや何かに仕える事としてやっている人と、志す事としてやっている人では違ってくる。僕は自分のビジョンを犠牲にするためでなく叶えるために仕事があると思うので、未来のビジョンを明確に持った上で、自分がより豊かになる意思決定をしてほしいですね。

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