本質をとらえたアイディアで、
人たらしになれ

株式会社SELTECH
代表取締役社長 江川 将偉 氏

100年後の未来から、今後の事業を考える

今後の事業展開について教えてください。

今、急成長のフェーズに入っています。これまで当社は、大手企業のお客様に受け入れられたビジネスがほとんどで、そこで売り上げを伸ばしてきました。製品販売というよりも、お客様の足りないパーツを売っていた感じですが、ソリューション化していくのが次のフェーズです。例えば「我々の技術を使ってこんなビジネスが出来ますよ」と提案していくビジネスに切り替えていく方向です。お客様が当社から色々なものを買い取っていくというビジネスなら、お客様にあまり左右されないブランディングが出来る。海外戦略では、台湾とアメリカにオフィスを作り、重点的にやるつもりです。ヨーロッパの拠点も考えています。

海外戦略も進んでいますね。IPOも予定されているとか。

IPOをしたい大きなポイントは、会社のブランディング。実は資金を調達する必要性はあまりなく、ブランディング目的で広告宣伝費用を投入し、優秀なエンジニアや経営陣に参画していただきたいと思っています。私自身は他にもやりたい事業がいくつもあるので、IPOをして自分は会長職となり、他の優秀な方たちで会社を回していくという形にしたい。優秀な経営者が育ったら、本格的に次の事業をやろうと考えています。
今、私が言っている人工知能のあり方やセキュリティのあり方は、5、6年前からずっと言い続けてきて、やっとモノになってきた状態。10年20年先を考えるとまだ他にもやりたい事があり、そのために新しい会社や、研究所を立ち上げたいと思っています。私は事業家でもありますが、研究も好きなんですよ。

業界全体の未来についてどう見ていますか。

日本の経済産業省から、トリノで開催されるG7の会合のひとつであるI-7の日本代表として選ばれました。大手企業の社長たちが集まる経済産業省のミーティングで、将来に向けたAIやビッグデータの社会革命のあり方を話すことになりました。私個人は100年後の将来も考えていますが、そこを話してもなかなかイメージ出来ないと思うので(笑)、20~30年後の世界で話をしようと思っています。

その間にもAIやビッグデータで大きな社会変化がおこる。そこで重要になるのは“セキュリティ”。これを日本の技術の根幹としてやっていくべきだと思います。IoTを取り入れた製品は、中国やアメリカなどで盛んに作られていますが、今後セキュリティや細やかさの面で問題が出てくることも予想されます。そこでもう一度「日本の製品が安心安全だよね」、「IoT機器を買うなら日本製品がいいよね」という風潮に戻ってくる時代が来ると思う。だから我々の製品を日本から送り出し、海外にも発信していきたい。

我々が作っている人工知能は進化していて、趣味嗜好がある人間のデータの源泉になるものは何かということを解き始めている。身近なところでは、今、私が住んでいる家。土地を買い家を建てて、IoT機器を導入し、人工知能で24時間監視しています。人工知能が人の特徴を把握して、家にいると何もしなくても家電が勝手に動いてくれる。グーグルやアマゾンのように音声で電気機器を動かすのはもう当たり前の世界。次は人間の源泉になるデータを知る段階。これは個人情報の問題にも関わってくるので、そこでもセキュリティの必要性が生まれる。その時にAIをやっているSELTECHのセキュリティは大きな強みになる、そう思います。

将来、人工知能が人間に取って代わると言われていますが・・・

よく、人口知能が人間の職(しょく)を奪うという話がありますが、人工知能は人間に食(しょく)を与える事も出来るよ、と私は言っています。全自動の農業の時代は絶対に来る。我々はそこに人工知能を入れ込もうと考えています。車の運転をはじめ、30年後には全自動で農業やインフラが動く社会が出来るのではないかと見ています。その世界観の中には新しいルールも必要。そこまで見据えた上で、じゃあこうしようと我々は動いている。

人工知能が人間の脳を超えるという話も言われていますが、人間自体も成長するという視点もある。今まで教育レベルの水準が低くて思うような仕事に就けなかった人も、スマートフォンがあれば、今まで勉強しなければ分からなかったことも調べれば分かるようになる。我々はそんな将来のビジョンの中で、何をもって人間の成長というのかを考えながら、その根幹や、仕組みをつくっています。

言葉が一人歩きして、事業会社からも「とりあえずビッグデータ、IoTを導入したい」という声が聞こえてくる時代。今後3年、5年で日本のマーケットは変わると思いますか。

日本は残念ながら発想力が弱く、大手メーカーでも、社内でサービスを考えるのは難しいと思う。社内で考えるとどうしても「自分たちの事業ポートフォリオ上にAIを置くと、こんなことが出来る」とか「IoTで繋ぐとこんなことが出来る」という発想になりがち。そこを飛び越えない限りは進まない。今、日本は私が見ている限りアメリカから4、5年は遅れている。それを取り戻すには、追随するのではなく、違う角度から次の時代を見越して日本のポテンシャルを生かした分野で先手を打つべき。だからワールドクラスでまだあまり考えられていないセキュリティを日本のフラッグシップとして打ち出そうと提案しています。

今後は、日本ならではのソリューションを持ったベンチャーが伸びていくのでしょうか。

ベンチャーの中でも、もちろんクオリティは求められますが、新しい突破口を開く発想は圧倒的にベンチャーが強い。アメリカはまさにそう。日本にもシリコンバレー構想がありますが、アメリカのように投資が集まらない。もうひとつは大手企業がベンチャーと同じレイヤーで話をしていない。試みは始まっているけれど、まだまだ。アメリカだと、ウーバーやフェイスブックのように一発当たれば、すごいですよね。これは日本では出来ないビジネス。そういう発想を持っている人も少ない。大手企業の人としっかり関係性を築いて、味方につけられるベンチャーが我々以外にも増えて欲しいと思います。

物事の本質をとらえられる強さ

経営層を目指す20~30代の方にアドバイスするとしたら、どんな事ですか。

みんな楽な方に流れたいもの、それはよくわかる。しかし歳を取ってくると、考えているつもりなのに考えられてないということも出てくるので、まず若い時は手を抜かないこと。当社の若手社員たちでも物事の本質を考えるのが苦手な人が多い。分かりやすくいうと、1+1は2と教えられているから答えられるが、1+1が2になる過程のプロセスを考えたことのある人は少ない。でも、ここに本質が隠れている。物事の本質を考えなければ、サービスに落とし込めない。誰かのサービスの後追いは本質じゃない。

私は人の話を聞いた時に「ここと、ここを組み合わせたら、多分物事の本質はこういうことだね。そうだ、ここの本質だけ足したら、こんな新しいサービスが出来るよ」と提案するのが得意。昔から頭の中でたくさんのシミュレーションをやっているから。
営業職の時、こんなことをやっていました。A3の紙にお客様の受注をゴールと書いて、自分を書く。そこからアリの巣のように想定問答を書く。こう言われたらこう、ああ言われたらこうと書いて、ゴールまで行けるかどうかをシミュレートしていた。何回もやっているうちに、ここを抑えれば受注がとれるという道が見えてくる。その道筋を描ける日本人はほとんどいない。物事をずっと考えないと出来ないですね。

もし考えるのが苦手なら、本をたくさん読んで自分のバイブルを見つけるのはいいと思う。でも歴史の成功事例を読んだら坂本龍馬みたいに成功出来るかというと出来ない。自分の身になるまで根幹を読み込まなければ意味がない、私は社会人になったばかりの社員には「毎日が試験だよ」と言っています。人間はそんなに簡単に覚えられない。学生の時と同じように書き起こしたり、何回もシミュレーションしないと身につかない。うちに入社すると考える事や学ぶことが多くて、びっくりするかもしれませんね。でも雰囲気は朗らかですよ(笑)。

夢を叶えるために必要なこと

江川さんが考える組織づくりとは?

まずベンチャーなので、大手企業の価値観とは違います。大手とベンチャーの違いというと、会社の規模や柔軟さを挙げる人もいますが、私は、言い方は悪いけれどベンチャーは殴られてくるのがあたりまえ、怒られてでも仕事を取るのがベンチャーだと思っている。今、当社は攻める時。営業、技術、管理に加えて組織戦略上、推進部や経営企画部を作りましたが、管理部まで含めてアタッカーじゃないといけない。今は、大手企業のような守りは必要ありません。具体的に言うと、何かが出来ないとなった時に「じゃあどうする?」と考えるのが我々の仕事です。

SELTECHのビジョンのひとつに「夢を持つ」というのがあります。夢を持たないと成功には届かないということ。とはいえ、松下村塾を開いた吉田松陰が「夢なき者に理想なし、理想なき者に計画なし、計画なき者に実行なし、実行なき者に成功なし。故に、夢なき者に成功なし」と言っているように、ただがむしゃらに頑張ればいいというものではない。悩んでも、切り替えて進もうと思えるか、無理だと諦めてしまうかが分かれ目ですね。

次世代の経営者へ、メッセージをお願いします。

まだまだイノベーションは起こる。次代の人たちには、ワクワクするイノベーションがどこにあるのか理解して、一歩踏み出してほしい。目先のことでやると、取り返しがつかないことが多い。多くの若い人は一発のアイディアで始めるけれど、社内、社外含めてどれだけ仲間がいるか、「この人のためなら」と言ってくれる人がいるかどうかが、会社を持つと大きく影響する。見込みのある人なら、投資したいと言ってくれる人が出てきます。経営者の人物像、考え、アイディアがあって、ようやくベンチャーとして強くなれる。社長になるのが夢なら、そこに至るプロセスを考えるべき。お金を払うのも、貰うのもビジネスは結局、人。そういう部分でも人が大切。「アメリカはもっとドライに仕事しているじゃないですか」と言う人がいますが、そんなことはありません。妻の親戚にアメリカの大手企業の社長がいますが、人付き合いが本当に濃い。ソサエティがしっかりしていて、信用するか、しないかも人次第、イメージとずいぶん違いますよ。人との繋がり、自分を押してくれる人たちの存在を大切にしながら、夢を実現していってください。

Topページへ