30人の町工場から世界のトップへ

日特エンジニアリング株式会社
代表取締役社長 近藤 進茂 氏

日本の会社だからといって、もはや日本人に既得権はない。

従来なら、日本企業はまじめにやっていればよかったけれど、ITやソフトの世界になると、時代ごとに企業の役割も変わってきます。そこに乗り遅れたのは日本の生真面目さ、忠誠心だと思います。例えば人の生産性はどんなに上がったとしても2~3倍が関の山。でも開発やマーケットをつくりあげる人は何十倍もの価値を創造します。そういう人をどう生み出すか、企業にも問われています。企業だから競争しないといけない。経営は、勝つか負けるかの格闘技です。

創った価値の分配金はどこからくるかというと、お客様から。社長は、株主や従業員に分配をするだけです。従業員一人ひとりが主体性を持ち、自分で個人の経営をしているという精神でやれば、結果的には大きく貢献出来る。そう皆が実感出来るような環境を作らないといけないと思います。例えば韓国にも当社の社員がいますが、「評価されたい」という思いが強く、仕事をしている時の目つきが違います。中国人も、国というより中国人としてのプライドを持っています。彼らは仲間やトップとの信頼関係を大事に仕事をしています。
私はいつも言うのですが、我々の会社は海外で約70%を売り上げる。だから日本人の既得権なんてないのです。日本人は開発力と創造性を持って、優れたマネジメント能力があればいいけれど、なければ意味をなしません。

ソフトが進化すればするほど、ハードが必要になってくる。

今後のマーケットについて、どのように見据えていますか?

まず、当社が扱っているのは様々な要素技術です。設備の開発に必要な要素技術や設備の根幹をなす基本技術。時代が変わり、最終製品が変われば、それに応じて得意先企業と一体になって新しい設備を開発していけるという要素技術を持っていることが大きな強みです。だからどの分野にも適応可能であり、必要とされ入っていけます。
例えば自動車はどこもグローバル化。特にヨーロッパの一つひとつは小国。ドイツも日本より人口は少ないが「全体最適」の仕組みを作るのが上手い。だが、そこに日本のIoTが食い込む余地はあると思います。例えば某大手メーカーのスマートフォン。マーケティングとデザインはアメリカですが、あの小さなスマホの中に、アジアの各社が作ったハードが詰め込まれています。いいアイディアを持って来させて、色々なところに競争させています。デジタルだけでは意味がありません。

日本はモノづくりの精神を活かして「部分最適」でいくのが良いと思っています。今後、市場のメインは専用機ではなくモジュール化していくので、繊細な技術が生きてくる。コイルで繊細さが問われる物の一つが焼き物です。電線、フェライト、マグネットなど焼き物に100%の安定はない。それらを組み合わせた製品の特性と品質を保たなければ、相手の望む製品になりません。そして最後にすり合わせの技術が必要。人間はアナログの最たるものだから、十人十色、皆違います。だからそこに我々のチャンスがあります。

これからのIoT時代で重要となるのは、命にかかわる事業だと考えています。例えば自動車は無人運転を目指していますが、ソフトが出来たとしてもハードが完璧でなければなりません。振動・劣化など、色々な問題があり、壊れたらダメです。そこに日本の、我々のチャンスがあります。日本は0から1を生むのは苦手かもしれないが、決まった型があれば非常に強い。デジタルだけでなく、アナログが不可欠です。そこにはすり合わせの技術、積み重ね、経験、繊細さなど、日本のいいところが活きてきます。ソフトの世界では、日本は正直かなわないと思います。世界の頭脳がアメリカに集まって切磋琢磨しているし、「全体最適」には英語圏や、人口の多い中国などがやはり強くなっていくと考えています。

自分の仕事のオーナーシップを持つ人であって欲しい。

日本の次代のリーダーを担う30代や40代に対して思うことはありますか。

世の中が劇的に変わってきていることを、本当に知っているのかなと思います。これからIoTやインダストリー4.0(第四次産業革命)への変化が進むと、定型的な仕事は無くなります。そうなると想像力、技術力、それからコミュニケーション能力など、AIが出来ないことをやらないと、自分のポジショニングは難しい。そして、その時代は相当早く来ます。汎用ロボットなど使い出すのはすごく早い、更にデジタルといったものはインフラに無いさら地であれば、最先端のものが更に早く立ち上がります。スマートフォンが良い例です。日本は今までの蓄積があるから、それを継続するか壊すしかない。それには時間がかかります。そういうことを本当に知っているのだろうか。

日本社会はコンプライアンスがかなり過剰で、それに振り回されている気がします。故に気持ちがデフレになっています。必要なことだけをやればいいのに、会社の規定の中で稟議書や報告書を書くことが求められます。それは誰に見せるため?それで生産性は上がるのか?そういう仕事が増えています。今、政府が推進している働き方改革というのは、「短時間で効率的に生産性を上げ、稼ぎなさい」ということです。要は付加価値を上げなさいということです。知的産業時代では時間の単位でなく、個のスキル、感性が付加価値を生みます。個を強くすることで均質的を好まぬ人が、新しい商品、サービス、仕組みづくりを自分で切り開いていくのだと思います。

私は、会社は人にとって、人生の舞台だと思っています。そこでどう踊れるのか?演者として存在感をどう出すのか?仕事では常にオーナーシップを持って自律して欲しいものです。

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